澤岻和海
所属プロジェクト:アートプロデュース
熊倉研究室
中谷亮介
所属プロジェクト:創作
田村研究室

黄瀬:
ごきげんよう!
東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科、プロジェクト音響所属の黄瀬と申します。このラジオは、2024年12月14、15日に東京藝術大学千住キャンパスにて開催される「千住アートパス」の企画の一つとして収録されています。音楽環境創造科、通称「音環」の学部一年生がそれぞれトークテーマや個々の活動について話しながら、「何をしているかわからない」と言われることもある音環での学びについて、それぞれの視点から発信していきます。
題して「音楽環境放送科」!
それでは早速今回お越し頂いた二人をご紹介します。
澤岻:
はい!澤岻和海と申します。熊倉研究室所属です、お願いします〜
黄瀬:
そして…
中谷:
はい、プロジェクト創作所属の中谷亮介といいます。お願いします〜
黄瀬:
すごい、今までのラジオ収録の挨拶の中で一番真面目。
澤岻:
まじで(笑)皆なんかボケてもってくの?
黄瀬:
なんか一人、初っ端から「中◯由の、オールナイト◯ッポン!」って言ったやつがいて(笑)
澤岻:
あ〜やりたかった!そういうのやりたかった!(笑)
しまった〜
中谷:
とばしすぎやろ(笑)
澤岻:
やりたいわそれ!
中谷:
やりたいの!?お前二番煎じはもうあかんぞ、二番目以降は面白いあれではないぞ(笑)
黄瀬:
別に一回目もそんなに面白くなかったけど(笑)
一同:
(笑)
澤岻:
なんか、高田純次みたいに「キャメロンディアスです!」みたいなこと言いたかった(笑)
黄瀬:
あーもう、入りからちょけていくのね(笑)真面目にやってください!真面目な企画なんでこれ!
澤岻:
分かりました(笑)
黄瀬:
えー今回はですね、まぁこのラジオ、呼んでるメンツが結構プロジェクトが違う二人とか、あんまり専門にしてるとことが被ってない二人とかを呼んでるんですけど、多分に漏れず二人もあんまり被ってなさそうだなっていう理由で呼んだんですよ。
逆に共通点から攻めてくのも面白いかもしれないね。二人とも元々のルーツとかは似てたりするのかな?
澤岻:
完全に同じではないけどね。
中谷:
どうですか?音楽は始めたのはいつですか?澤岻くんは。
澤岻:
まぁ中1の時にドラムを始めたのがきっかけですね。
黄瀬:
え、ドラム入りなの!?
澤岻:
そう、入りドラムなんですよ(笑)声楽は中3からなんです。
黄瀬:
知らなかった。ドラムだったんだ。
澤岻:
そう、声楽をやってるんです私は。
黄瀬:
あ、そう、それやってかなきゃね。そもそもあなた方が何を今してるかを言ってかなきゃいけないんだ。
澤岻:
そうですね(笑)
そうね、私は今熊倉研究室でアートプロジェクトを学んでるんですけど、大学に入る前とかは、高校が音楽科の高校に通っていて。で、そこで声楽専攻だったんです。で、高校に入る前もギターやったりドラムやったりして。まぁ完全にクラシックってわけじゃないし完全にポップスってわけじゃないしみたいな感じで。結構浅く広くやってる感じだと思います。
黄瀬:
中学生の時は軽音学部だったってこと?
澤岻:
いや軽音楽部なくて…
黄瀬:
あ、違うんだ。独学で?
澤岻:
そう、教室に通ってて、近くにドラム教室があったんで。
黄瀬:
そうなんだ〜沖縄に?
澤岻:
そう、沖縄に(笑)
中谷:
そう、彼は沖縄出身なんで。
澤岻:
そうなんです沖縄出身で。沖縄は結構「オキナワンロック」とか言ってベトナム戦争の時に1960年から70年くらいの時に米軍が沖縄市、基地があるんでそこでめちゃくちゃライブハウスがめっちゃくちゃ盛んに行われてたんですね。
黄瀬:
あ、そこでもう持ち込まれてるものがあるんですね。え、知らなかった!それの名残りだったりするんだ。
澤岻:
まぁちょっとあるかもね。うちの先生とかはそうだったかな。
黄瀬:
絶対さ、私とかは神奈川出身だったり東京近郊だけど、その辺が知ってる音楽文化の土壌とかときっと違うよね。
澤岻:
そうだね。だから、沖縄民謡とかもCMとかで流れてくるし、だからオキナワンロックとかもどっかでは聴くし、みたいな。
中谷:
結構生活に根ざしてるんや、オキナワンロックとか民謡は。
澤岻:
割とそうやね。だからそういう沖縄そば屋さんとかのお店に行くと、自分の高校の近くにあったんだけど、店主が三線をずっと弾いてて、お客さんがいない間は。
中谷:
粋だねぇ。
黄瀬:
イメージ通りっていうか。
中谷:
やっぱ我々からするとちょっと「異国情緒」的なものを感じさせるけど、やっぱちゃんと沖縄には染み付いてるというか。
澤岻:
そうね、結構染み付いてるね。
中谷:
隣にあるんやね、生活の。
澤岻:
やっぱり狭いからね。狭いぶん濃いのはあるよね。
黄瀬:
なんかいいね。地元のエッセンスをちゃんと持ってるみたいなの。
中谷:
ルーツをね。
黄瀬:
そう!かっこいいね。そこから声楽か。音楽科の高校に行ったのはいつ決めたの?
澤岻:
それも中3の時に決めたんですけど、なんで行こうかと思ったかっていうと本当に衝動的で。最初は福岡にある筑前高校っていう、椎名林檎が通ってた高校、退学したんですけど、に行って軽音を本気でやりたいと思ってたんですよ。でもコロナになっちゃって、ちょっと県外の高校行くの難しいなぁって思ってたら、「あ、声楽あるじゃん!」って。俺声が低い、高くはないから声楽の方が向いてるんじゃねっていう理由で、いきなり突っ込んだ感じで。
黄瀬:
え、そういうのって誰かのアドバイスを受けたりとかじゃなくて?
澤岻:
いやもう、母親に「高校に声楽科っていうのがあるけど?」みたいな。で「それいいやん!」みたいな。
中谷:
え、それはだから、声楽やってない時に提案され、で声楽やってない澤岻が「いいやん!」ってなったってこと!?
澤岻:
なったってこと(笑)
中谷:
え、それは、もうちょい説明してくれる?(笑)
澤岻:
確かにあんまり人に言ってなかったもんね(笑)
中谷:
歌のルーツが分からへん(笑)声楽やってないタイミングが…
え、始めたんはドラムやけど音楽の原体験としてはいつ?
澤岻:
カラオケでウルトラマンを歌うのが大好きでした。
中谷:
あ、なるほど。だからそれは習ってたとかではないけどやっぱ歌っていうのには…
澤岻:
歌が一番底にあるね。
中谷:
ちなみに何歳?それ。
澤岻:
もう、物心つく前からウルトラマン。
中谷:
へ〜!じゃあそこで声楽って言われた時に歌に抵抗がなかったんや。
澤岻:
なかったね!
黄瀬:
え、私が知ってる声楽始めた子達って、親が声楽家とか、基本歌が好きな子ってポップスに向かうというか。向かいやすいじゃない。だから入り口は結構狭いから、声楽に自分の衝動的に声楽を始めるっていうのが全然ピンとこなくて(笑)
澤岻:
いや、なんかね。中2の時にずっとYouTubeで「ミックスボイス」っていう、ポップスで使えるボーカルの技術を独学で勉強してたんだけどまっっったくできなくて。「これ俺高い声向いてないな」と思って、声楽始めるのがなんか…
黄瀬:
ミックスボイスね…私はミックスボイスは幻想だと思ってるんだけど(笑)強めの思想なんだけど(笑)
中谷:
あれよく分からへん。
黄瀬:
うーん、あれはもう分類上裏声でしかない、って私は思ってるけど。
そうだね…あ、ここあれじゃん。歌の話できる!
澤岻:
そうだね!全員歌得意だね。
中谷:
全員じゃない(笑)俺は歌は…
澤岻:
あなた一番高い声出るじゃん(笑)
黄瀬:
そう!中谷めっちゃいい声してんだよね。
中谷:
でもあれは自分でもよく分からへん。この間黄瀬ちんに聞いて教えてもらったけど、別に歌上手いわけじゃない。出はするけど…なんか上手いとは違うというか。
黄瀬:
出るし、ピアノやってるからピッチが正確じゃん。音感がもうバッチリだから「あと何が必要なん?」みたいな。「それができてれば上手いでいいだろ」みたいな(笑)要素が揃ってるから。私的には歌うま認定だわ。
澤岻:
うん。全然もう…全然俺より上手いと思う(笑)
中谷:
いやなんでやねん(笑)もっと持てよ誇りを(笑)
澤岻:
いや俺はね、まだ技術がない、技術があって初めて表現ができると思ってるから。技術ない状態では表現ができないから。それは必然的に上手いとは言えなくなっちゃう。
中谷:
いやあるわけないやん俺に、技術が(笑)
澤岻:
いや音域が広いってだけで表現が自由にできるんだよね。
黄瀬:
基盤がある感じがするよね、確かに。
澤岻:
そうなんだよね。そこに苦しめられたな〜
黄瀬:
声楽とかはさ、私は音大の声楽科に元々所属してたけど、ある程度体系化された歌い方っていうのがあって。それこそ「ここまで音域を伸ばすトレーニング」とかもあるし、「この調をしっかりピッチ当てるトレーニング」とかもあって。でそれをやってきた声楽の土壌だからやっぱりしっかりピッチが当たることの大切さみたいな、それがあって初めてみたいな認識が強いのかもしれない。
澤岻:
確かに、そうだよね。
中谷:
確かに、ピッチはでもピアノやってると俺も敏感かも、どっちかというと。
ピアノと言いつつ家ではずっと電子ピアノを弾いてたから、狂うってことがなくて…
澤岻:
あー、確かにね!
中谷:
だから軽音やってる時はギターとかベースのチューニングは俺結構気になるタイプやった。
澤岻:
でもピアノやってる人、うちの高校の同級生とかって別にピアノやってもそんなにピッチ当たるわけじゃないっていうか。ピアノって勝手に音出してくれるから自分からピッチを合わせに行くことがないんでね。管楽器とかと違ってないから。弦とかと違って。
黄瀬:
あ〜、押せば出るから。
澤岻:
そう、押せば出るから!「歌えば出るやん」って思ったらそういう話ではないっていう。
中谷:
確かに確かに。それも一理ある気がする。
澤岻:
うんうん、これは結構自分の中で考えてることで。
黄瀬:
触れてきたもので聴き方もめっちゃ変わると思うしね。
そう、聞きたいことがあってさ。いわゆる「音楽の三要素」って言われるものがあるじゃん。「リズム・ハーモニー・メロディ」って言われてるやつ。それはもう解体され始めてるし、正しく定義され直し始めてるけど、改めてお二人の考える要素を聞きたいなって思ってて。
澤岻:
うーん。今ちょっとかなり悩んでるけど、中学の時はメロディ、旋律が優位だと思ってたね。
黄瀬:
それはなんで?
澤岻:
やっぱ歌が原点だから。なんか歌ってさ、脇役になることなくね?って思って。
黄瀬:
まぁ、そうだね。合唱でもない限り主旋律にあたるよね。
澤岻:
そう。歌が一人ってなったら絶対歌が主役やんっていう。だからメロディが優位なのかなってその時は考えてた。
黄瀬:
え、変わり始めてるの?今。
澤岻:
いや、今はね、なんとも言えない状態に入ってる。
黄瀬:
なんかあった?(笑)
澤岻:
やっぱり音環の中で現代音楽とか、あまり触れてこなかったから、聴いたりしたり。あと自分で作曲とかもするようになって「あれ、これメロディだけじゃ音楽成り立たねぇな」って思ってきて、やっぱり。
黄瀬:
確かに。逆に現代音楽とかは断片的な音のまとまりとかを扱い始めて、メロディがなくても成立するものもたくさんあるからそこに比重を置くと混乱するよね。
澤岻:
そうなんだよね。
黄瀬:
まぁ中谷さんはね?その…
中谷:
いや、別に…(笑)
でも音楽の三要素って言うけど、いわゆる三本柱イメージではない。だからどれか一個が欠けたら成り立たなくなる、なんてことはなくて。別にリズムだけでも曲は成立するし、単旋律の歌だって成立し得るし、和音だけでもいいし。三要素とは言いつつも別に全部が不可欠なわけではない。ただ、その三つの視点から音楽を捉えると便利だよねっていう、なんか便宜的なもの。あとは西洋音楽がそれを大事にしてて、それが世界を席巻したっていう…
自分は和音が好きで、和音のことについてもっといろいろ追求したいって思ってこの大学に来てるから。でも和声もリズムやメロディによって新たに世界が広がってることが結構あって、だからいわゆる西洋音楽のクラシック的な和声っていうのは、完全に和声進行がリードしてて上のメロディがついて、たとえばリズムとかメロディによって和声が変わる、ここに相互関係があるっていう解釈はあんまりしない。和声は和声として一つ独立した「和声学」っていうものになる。だし、メロディも和声から解釈する、例えば「これは非和声音のうちの先行音ですよ、刺繍音ですよ」みたいな考え方っていうのはそもそも「和声第一主義」。やからメロディに対してこれは和声音か和声音じゃないかっていう解釈をする。
黄瀬:
和声上の役割で解釈するってことだよね。
中谷:
そう。でも、結構最近はそれが覆ってるというか、全然形が変わってきてて。まぁ最近でもないか、もうロマン派位から変わってはきてると思うけど、いわゆるメロディーに対して違和感のない和声を当てる、つまり和声の横の並びではなく、メロディーラインの音がテンションノートにあれば下は何を置いてもいい。これによって不思議な転調が現れたりとか、例えば長い音、音価の強い音で弾いてしまうと不協感が強くて弾けないけど、短い音で入れるなら結構リズム的なアクセントになってジャズ的な、ブルース的な要素が足されるっていう、和音を一つのリズムのアクセントとして使うような文法もあって。なんかその辺は本当に、和声第一主義やったクラシックの価値観からだいぶ逆に変わってきてる、本当にいろんな文化が混ざって、それによって逆に和音も発展したかなっていうのはすごく思うね。
黄瀬:
この間さ、応用音楽学の授業でも話してたけど、そうじゃなくなってきたロマン派以降の音楽、ジャズやポップスってものに対しても和声的な聴き方を中谷はしてるって言ってたじゃない?それは和声進行が先行してる音楽形式じゃないものに対してどういう解釈をすることを指してるの?
中谷:
それは本当にジャンルに合わせて聴く。例えば和声進行が第一じゃない曲っていうのは古典とかの和声の文法で読み解こうとすると絶対説明できない和音が存在する、並び的に。だからそういうのはまた違う文脈を持ってくるしかない。古典のノリで今のポップスであったりジャズの音楽っていうのは解釈し得なくて、「じゃあなぜそういう音が使われてるのか?」っていうことを議論しようと思うと、そっちのフィールドに入っていかないと話ができない。だから、和声を聞くっていうのは本当にジャンルに合わせて聴いてる。
黄瀬:
なるほどね。形式を使い分けるってことをすでにしてるのが本当にすごいと思う…
中谷:
でもなんか、自分の話になるけど、やっぱ「構造主義的な美学」みたいなのがずっと自分の中にあって、結構自分は数学とか好きやけど、それも「なんでこの式って成り立つんやろう?」みたいな、「なぜ」の部分、そのカラクリの部分がすごく興味の対象になる。で、その見方はやっぱ音楽を聴く時も同じで、「今めっちゃいい」って思った瞬間があった時に「何が良かった?」っていう疑問が第一に浮かぶ。それで例えば、今のはリズムの取り方が良かったんかなとか、メロディの流れの、例えばここの跳躍がすごく刺さったんかなとか、要素に分解し始めるっていう聴き方をする。なんかそれは自分の美学の根幹にある気がする、そういう構造主義的なものの見方が。
で、たまたま和声が自分に刺さって。和声って結構理論化されてる部分もあって、自分の美学とマッチしやすかったのかなっていうのはあるかな、セオライズされてるから。
黄瀬:
そうだね…改めて言語化されるとそうだけど、それに近しいことはやってて…
でも私の場合はそれって歌詞なんだよね。いいなって思ったポイントって絶対言葉があって…器楽曲を聴いてこなかったし、あんまり刺さらなかったっていうのもあって…なんだろうね、澤岻さんの刺さりポイントは?
澤岻:
刺さりポイント…めちゃくちゃふわっとしてる。もう本当に特定できないな。サウンドがいいとかそんなレベルでしか表せないな。なんとなくいいと思ったのを、いいと思った部分がある曲をただ自分のプレイリストに並べてるだけみたいな…まだ言語化はできてないな、俺は。
中谷:
ジャンルで言ったら?
澤岻:
まぁポップス、昭和歌謡がめっちゃ好きだから昭和歌謡はめちゃ入ってるけどプレイリストの中には。
黄瀬:
歌物以外にそういう曲はあったりする?
澤岻:
歌物以外ではあんまり…器楽曲じゃ感じたことないかな。普通にインスト…YMOとかだと「ABSOLUTE EGO DANCE」がめっちゃ好きで。それのなんか、めっちゃ好き。めっちゃ好きとしか言いようがないんだけど(笑)めっちゃ好きなのよ。「うわぁすげぇな」ってなるね。
中谷:
っていうあたりは聴き方の違いやね。「なんかすげぇ」っていう大きく受け取ることがやっぱ俺はできなかったから…
黄瀬:
抽象的なまま受け取れなかったってこと?
中谷:
そう。「何が?」っていう、絶対そこに目がいってしまう。「なんでそれは成り立つの?」っていうのが。でも、それもあって独学で高校の時にコード理論みたいなのをやってた。それもやっぱりいわゆる「コード理論大全」みたいな分厚い本をでっかいのをゴンって買って、「これ全部読んだらわかるんだ」みたいな。「コードについて全て理解できるんだ」みたいな幻想というか、抱いてて。だからそれもあってそういう勉強、自分で読んだりもするし、作り方とかも結構そういうアプローチをする。なんかいいメロディとかもあんねんけど、自分の中に自分のルールが存在して、音の付け方とかに。そういう構造主義的なルールに縛られながら生きてる…
黄瀬:
悪くいうとね?(笑)
いやぁ、「中谷先生」ですよ、本当に。やっぱそういうのって結構アカデミックな音楽の聴き方されたありするわけじゃん。それこそ構造とか形式から曲を捉えるってことをやってるわけで。それを地で行ってんのが異質だなぁって思う。ちょっと「勉強」って気持ちにならないとそういう聴き方ってできないからさ。
中谷:
でも、全て構造的に解析して全部説明し尽くせるってことは俺は諦めてるっていうか、そこを全部理論で埋めるのは無価値だなと思う。いわゆる理系の物理とか化学とかっていうのは本当に実験を繰り返して、正しいことばっかりを積み重ねていく、でその先に真理があるはずだっていう考え方。まぁ、いろいろ、ゲーデルの不完全性定理とか言い始めるとそれも怪しいけど、でも音楽とか芸術っていうのは、特に音楽っていうのは時間芸術やから、昔の偉い人が何やったかって、その文法を用いて作らなければならないみたいな理由は一切なくて、もちろん影響は受けるにしても昔築き上げた理論なんてのは数十年後に容易く壊される。だから理論っていうのは本当に後付けの理屈でしかなくて、なんで理論を学んでるかっていったら昔の、すごかったとされてる音楽の要素をパクるために昔起きた現象をセオライズして自分のものにするため。だからこれが、これからの音楽、未来永劫強い力を持ち続けるツールだとは俺は微塵も思ってない。し、それが面白いかなっていう。だから、どう考えても理論とか形式に当てはめられないのが面白いなって一番思う部分でもある。
澤岻:
昭和歌謡の話とかしてもいいの?
黄瀬:
あ、してください!
澤岻:
多分、誰からも何で?って思われるんだけど…
中谷:
何がいい?魅力を語って欲しい。
澤岻:
魅力?魅力はねぇ、拙さもあるような、でサウンドもあの時特有のノスタルジックな感じがあるし、自分が一番好きな80年代アイドルの歌手が南野陽子って言うんだけど、歌はヘタクソなの!(笑)まじで下手くそなんだけど、編曲家さんが80年代の間はずっと同じ方がついてらっしゃって、それが南野陽子ワールドみたいな感じが自分はしててすごく好きなんだよね。
黄瀬:
私澤岻と(初めて)会った時にさ、南野陽子の話しかしなくて、澤岻が(笑)澤岻和海って名前より南野陽子って名前の方が(笑)
中谷:
初対面で!?(笑)
澤岻:
意味わかんないもんね(笑)
黄瀬:
「えっと南野陽子の人だよね?」みたいな感じ(笑)
澤岻:
そうそう、結構話した。バイト先に南野陽子のサインがあって、15年ぐらい前(のもの)なんだけど、初出勤の時めっちゃアツかった。もちろん松田聖子とか中森明菜ともめっちゃ好きなんだけど。
黄瀬:
そうだね。私もその辺の有名どころだったら聴いてるし、あと私歌詞から日本のフェミニズムを読み解くっていうのをやってた時があって。その時には日本のアイドル歌謡の歌詞を読み解いて、「その時の社会がいかに男性中心的だったか」っていうことと、「男性が求めてる女性像を描き続けてた」っていうのを読み解いたりしてたんだけど。それこそ松田聖子さんってさ、だんだん自分でプロデュースをするようになっていったじゃん?
澤岻:
そうだね!自己プロデュースの人って感じ。
黄瀬:
そう、だから自分で自分の魅力だとか魅せ方だとかっていうのを書き始めたっていうのはすごい思想史的にも面白いんだけど、でもラブソングからは抜け出さない、っていうのがあって。一方中森明菜とかはがっつり、強かに男性に反抗するみたいな性格を持ってる歌詞が多かったりして、っていうのを読んでたことはあるけど。でも実際南野陽子さんとかは本当に存じ上げないし、サウンドとして面白がるみたいなのはあんまりしたことないかも。
澤岻:
南野陽子の歌詞も結構いわゆるアイドルって感じの、「清楚可愛らしい路線」ではあるんだよね。
なんか松本隆の歌詞とかもすごく好きで… 言語化はできないけどとにかく好きなんだよね。
黄瀬:
へぇ〜、どこで出会ったの?
澤岻:
どこで…ニコニコ動画を観てて、意味わかんないんだと思うけど…
黄瀬:
そこで昭和歌謡に出会うんだ(笑)
澤岻:
そう、中3の時にコロナで暇な時にニコニコを観てて、てかそもそもニコニコから、最初に米津玄師にハマって、小6の時に。で、ハチを聴きに行こうってなってニコニコ観にいって、ボカロにめちゃくちゃハマって、その後歌い手にめちゃめちゃハマって、その後プロの歌手にハマって…
黄瀬:
プロの歌手、急に広くなった(笑)
澤岻:
歌い手さんは一応アマチュアではあるから。そこからプロの歌手にハマって、そこからJ-POP、90年代のとかを聴くようになって、で遡る形で80年代に到達したの。
黄瀬:
ボカロから入ってそこに辿り着くの異色だね(笑)
中谷:
タイムスリップしてんねんな。
澤岻:
だからミックスボイスにであったのは歌い手さんの影響なんだよね。
黄瀬:
なるほどね!
澤岻:
だから、聴いていくうちにどんどん下手な歌を聴いていくようになっていく感じが、対抗してるような感じがするんだよね(笑)でもそれがすごく好きな部分。
黄瀬:
すごい時代性を感じる!どの時代にもアクセスできる、今に生まれた高校生だから辿るみたいなところがあるね。
澤岻:
そうね!
黄瀬:
ボカロから入って…やっぱりボカロってみんな通るんだね。結構ボカロの話出るんだよね、このラジオ。
澤岻:
やっぱ音環生だからね…
黄瀬:
あ、そう!あたし藝祭の時に美術側に行ってさ、「音環って知ってる?」て聞いたら「なんか、クラブDJとかボカロPがいっぱいいるところでしょ?」って言われて(笑)
澤岻:
いっぱいはいないけどね、いはするね(笑)
中谷:
音環ってなに?って説明すんのがいっちばん困んねん!
黄瀬:
そう、時間取れる時はいいんだよ。「こういうのをやってて、同期にはこういう子もいて実際こういうことをやってるんですよ」とか言えるんだけど、美容院とかさ、あと30分で別れるの確定みたいな人に対して軽くさらっと一言で言う方法がないんだよね。
澤岻:
そう、語る分には面白くできるんだけどね。
中谷:
学科の名前出さずに、「なんか音楽を作ったり、演奏したり、まぁ色々やってます…」みたいなナヨっとした言い方を…(笑)
黄瀬:
そうね…しかもプロジェクトによってさ、中谷とかは創作だからそれでいけるけど、アープロ(
アートプロデュース)とかはさ、「まぁ研究…研究っすね…」みたいな(笑)どうしたらいいんだろう。
熊倉研究室難しいよね。
澤岻:
熊倉研難しいね、まぁ現場があるから現場の話すればいいんだけどね。
黄瀬:
結構さ、イベント運営とかでしょ?とかって解釈されたりするけど…
中谷:
難しい…凄さが伝わらへん!
黄瀬:
そうなんだよ!わかる!別にスタッフをずっとやってるわけじゃないし…
中谷:
本当にアープロの人すごいんですよ。
黄瀬:
本当にすごい!
中谷:
人ひとりに搭載していいスペックじゃない処理能力を持ってる。
黄瀬:
わかる。日々多忙そうすぎる。
中谷:
なぜそのタスク量で処理できるのかじゃないけど…
黄瀬:
文面もしっかりしてるしね。
澤岻:
メール打つの上手くなるからね(笑)
中谷:
あれは特殊技能ですよ本当に、今日一番言いたいことかもしれない。
あープロまじですごいぞ!本当に。直に対面してわかる人間のスペック、澤岻くんもアープロではありますけど本当に…
澤岻:
俺はまだそんなに忙しくない方だけど、現場によって、本番がある現場と今年はおっきい本番がない現場があって、うちは今年じゃないんで、来年あるんで、来年は死にます。
黄瀬:
え、何の宣言?(笑)
澤岻:
来年は多忙により死にます(笑)
黄瀬:
そうだよね…毎年やってるっていうのがあってさ、同じメンバーで長年やることで作る人間性を扱うっていうのがすごい難しいと思う。
黄瀬:
あのさ、全然話変わるけどさ、澤岻は何をしに音環に来たの?
中谷:
あー、確かに。
黄瀬:
私予備校一緒で、そこから見た感じだと私の勝手なイメージでは確研?って思ったの。
澤岻:
そうなんだよね。確研にいつか移らないといけない時が来るんです。
黄瀬:
なんか劇場とか、舞台芸術の稽古場の話をしてて。
澤岻:
そうそうそう、稽古場に。本番もいいけどそういった稽古場の中での演者同士の音楽体験というか、休憩の時の交流というかを含めて稽古場っていい空間だなって思ってて、それを何かに活かせないかなって思って…だから空間とかそういう場を考えるためにアートプロジェクトに来て現場をやってるんですけどね。
中谷:
稽古場とか練習のいいと思ったポイントっていうのはどこ?
澤岻:
自分の場合は学生オペラに参加して、プロの方が助演で入ってもらって指導をちょこちょこ受けながらやってもらうって形だったんで、割と切磋琢磨してる感じだったのね。まぁプロの現場でそうなるかって言われたらそうじゃないと思うんだけど、そういう空間、音楽に対して真摯に向き合うようなところとか、作品に向かって高めあう空間とかが好きっていうか、いいものなんじゃね?っていうふうに思ってますね。
中谷:
そういう場を自分で作っていきたいってこと?
澤岻:
そうね、作ってみたいんですよね。
中谷:
なるほど…今すでにある稽古場とは違うものを?
澤岻:
違うものなのかっていうのはちょっと自分も考えきれてないなそこは。
黄瀬:
稽古場を作りたいっていうよりは、稽古場に渦巻いてる演者たちのエネルギーとか関係性みたいなものをまた違うところで作りたいと思ってるってことだよね。
澤岻:
そうそう!単純に再現できなかったとしても、そういうのがありますよっていう認識を誰かに持ってもらうっていうのもいいんじゃないかなと自分は思ってますね。
黄瀬:
今聞くと、アートプロジェクトの美味しいところじゃないけど、同じメンバーで同じ作品に携わり続ける中でできる練度みたいなものが…だし、本当にそれを認知することって大事だと思うの。やっぱり書面上のやり取りだけでは溢れてしまうものだと思うし、それがあるってことをしっかり認知してその大事さを、言語化しきれなくても伝え続ける人がいるのはすごい、希望だなと思う。
澤岻:
いつかドキュメンタリー撮ったりとかもするかもしれないし、文章でまとめることもあるかもしんないし。そこはまだ先のことだけど、今は現場で感じていきたいなって思ってる。
黄瀬:
っていうことですよ!それをね、伝えられないんですよ言葉で(笑)
アートプロジェクトに携わる人たちが大事にしてるものって、参加しないと見えてこない。
澤岻:
そうなんだよね〜
黄瀬:
でもやっぱり、熊倉先生が出版なさってる本とかって、それをどうにかして言語化する方法だと思うし、その方法として実例をいくつも挙げて分厚い本にしてるわけじゃんか。そういう試みはしていくよね、きっと。
中谷:
確かに、一個のものに向かって皆が集まってっていうところはすごくエネルギーが渦巻いてるっていうのはわかる、いわゆる部活とかも、そういう経験はわかる。
黄瀬:
それこそ夏の藝祭までの取り組みだって、曲もそうだし神輿制作、法被制作って本当に同じコンセプトに基づいてやってることだったから。
澤岻:
そう、いいなぁって思うんですよ。
中谷:
そういう機会は欲しいね、やっぱりこの大学にいる間にいっぱい経験したいね。
黄瀬:
そう、ほんと刺激的な経験だった!もうあんまりないよね。この繋がりというか、自分で働きかけない限り。
中谷:
でもやっぱ音環はみんなバックグラウンド違うから、俺はすごい積極的にそれやるべきやと思うな。協力すればするだけ本当に違うものが出てくるから、全然バックグラウンドが違うこここそ、それは本当に積極的にやるべきやし、そういう意味でもアープロの存在は大きい気がするな。
黄瀬:
アープロいなかったら音環でイベント何も起こらないからね(笑)
澤岻:
一人でこもってパソコンかちゃかちゃしてる感じになるのかな。
黄瀬:
いわゆるボカロPとクラブDJしかいない音環になっちゃうから(笑)
澤岻:
確かにそこを支えてるのはアープロかもしれない(笑)
中谷:
かき混ぜて欲しいよな。
黄瀬:
どんどん開いてかなきゃって感じもするし。
黄瀬:
グミ食べるから締め録ってもらっといていい?
中谷:
職務放棄やん(笑)
本日もそろそろお時間が近づいてまいりました。どうでしたか澤岻さん。
澤岻:
いやぁ、めちゃくちゃ楽しかったです。普段の雑談してる感じがしたんで、普通にラフにできましたね。そっちどうでした?
中谷:
いやぁ……いいですね音環。話が面白いのいい。すごくいいよ音環。
一同:
(笑)
黄瀬:
誰?(笑)
中谷:
でもこれ、ラジオ企画っていうのやったけどみんなに聞いてみたいなってすごく思ったね。澤岻の面白いルーツとかも聞けたし。まだまだ聞きたいこともあるし。
黄瀬:
だんだんおいしくなってきたこのグミ。
一同:
(笑)
黄瀬:
ほなこの辺で終わりますか!
本日はありがとうございました、お疲れ様です!
一同:
ありがとうございました〜!